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日本古典における『気』の用法及び中日文化比較
更新时间: 2009-3-4   来源:   点击数: 416

         日本古典における『気』の用法及び中日文化比較


                  柳艷(成都科技大学)


  日本語において、「気]は単純に表音的な文字ばかりでなく、一語としても日本独特の用法を持ち、よく用いられる字音語素でもある。また、接頭語、接尾語、慣用句などとして広く使われている。

  「気」には「キ」「ケ」二通りの読み方がある。小学館『日本国語大辞典』では、「気」がその読みによって別々に取り上げられ、「キ」のほうが主に自然現象、生命、精神、心の動きについていう。「ケ」のほうが「キ」と似た意味を持つほかに、人や物の状態から受ける感じについて言う。そして、「気」は漢字、漢語とはいえ、和文体物語などに現われる「気色」(ケ、シキ)は景色を表したり、「気配」(ケハヒ)は何となくわずか感じられたことを表したりして、日本語としての意味を持つ語があげられる。本文では「気」の音による用法及び「気」の意味について中日対象しながら検討しでみたい。

  古代日本語では「気」の用法は次の二通りがあると考えられる。一つは日本国語の音を表記するために「気」の意味に関係なく、純粋に音または訓を表音式に現わしたものである。もう一つは一語の語素と見られる「気」を表意的に国語の表現に用いたものがある。次は日本の古典である『古事記』『日本書紀』『万葉集』を中心として、日本国語表記に用いられた「気」の特徴及び「気」の表す意味内容が漢和語彙の間に差異があるかどうかについて考察しょう。

  『古事記』日本現存最古の典籍で。神話伝説を主とした歴史物語である。この本は漢文の表記様式で書いてあるが、和語表記もまじっている。ここでは『古事記』の「気」を含む語彙を考察したい。

1.固有名詞

  人名地名などの固有名詞では。「気」が多く見られ、単純に和語を表記するために用いられている。そして、「気」がすでに固定した固有名詞の用字として使う例もある。例えば、

多気智     字気比     宇多気陀邇     気多之前

2.普通名詞  (意味は『時代別国語大辞典 上代篇』による)

汙気 [槽](容器の―種)            矛由気(ほこをしごくこと)

多気   (竹)                        伊気(池)

字気 (食物)                    陀気(竹)

多気   (嶽)                    宇多多気(陀迩)


  これらの固有名詞と普通名詞で分かるように、『古事記』では。「気」が音仮名として、和語の―音節を表記した用法が多く見られる。

3.動詞、形容詞の類では、語尾活用に「気」が多く見られるが、語中にある「気」が少ない、例えば

①  迦気流(翔) (動四)      空高く飛ぶ。(下 仁德天皇)

②  安可良気美   (中 應神天皇)

例①と②がいずれも音假名である。つまり、上記の例では。すべて和語に用いた「気」であって。その用法として表音的と表意的の二類に分かれる。上代の日本語を表記するために「気」(ケ)は記紀、万葉を中心として「推古期遺文」、「古文書」、「風土記」、「続日本紀宣命」、「新訳華厳経音義私記」、「金石文」(「仏足石歌」を)除く)などに频用されていた。

  ―方、『古事記』では、ある意味を持つ「気」を含む語彙も少なくないのである。次は。「神気」「役気」の意味について考察しよう。

  『古事記』に見える「神気」は、『正訂古訓古事記』(享和三年刊  江戸時代)によれば『カミノケ』と読まれているが、次に「神気」、「役気」が『古事記』でどんな意味を表すか見てみよう。本文の変体漢文に「押気」と「役気」が見られるがその例を示すと

③  神気不起  国平安              (中卷 崇神天皇)

④  因此而役気悉息 国家安平也    (中卷 崇神天皇)

  この二つの例文で分かるように、どちらも疫病を指している。「役気」は「疫気」と書く場合本あるが(田中本校訂古事記)。「神気」という語は同じ語形で中国語にもある。『古事記』の場合の「神気」は、神の気配、神のたたりの意から転じで「疫病」の意に用いたのであろう。

  以上の二例に対して中国語では,「神気」がどのように使われているかを見ていくと、『大漢和辞典』(大修館  修訂版昭和六十二年―月)の記述によれば、

一、不思議な雲気。

二、萬物を生成する。霊妙な力。

三、心。精神。又、心内のいきほひ。

四、すぐれたおもむき。

  とある。そして、『漢語大詞典』に挙げられた中国唐代までの古典に現われる用例を示すと、 

0    地載神気  神気風霆  風霆流形  庶物露坐  無非教也 (禮記 孔子閑居)

  和神気  懲思慮  避風濕 節飲食  適嗜欲此壽考之方也 (漢 偅長統昌言下)

0  和液暢兮神気寧  情志泊兮心亭亭 (後漢 蔡 傳)

0  日余乏文幹  逢君善草札  工拙既不同  神気何由拔

                      南朝梁、何邊[答江革聯句不成]

0  [芸気主虛壁、江聲走白沙]

― 生 字 走 字   古廟頓主神気  唐 杜甫[禹廟]


これらの中国古典の用例に覚える,「神気」の意味は、『大漢和辞典』の記述と一致し、奇妙な雲気や人間の精神状態など善いことに用いる傾向がある。さらに、「神気」という言葉は『遊仙窟』にも見えるので、それを示す。

0    回   来  業  顏   色   神気   頓   再  醍蘭寺古抄本『游仙窟』

この例は日本で見られる康永三年(室町中期)の『遊仙窟』の古写本によるものであるが、「神気」の横に「タマシヒ」という訓注が見られる。

  以上の例③、④で分かるように、「古事記」に現われる「神気」は漢籍に見られるものと同じ語とは考えにくい。つまり、「神気」の「気」は中国語の場合は人や物事の性質を表し、日本的な用法は恐ろしい自然の力を表すものであろう。和語「カミ」を「神」という宇で書き表わすが。双方は多くひ共通性を持っていても日本国語とこれを書き表れす漢字との間には、ずれか見られるので、意味が完全に同じとは言えない。なぜならば、「神」という観念は日本と中国とは同じではないからである。

  上代国語に見える「神気」(カミノケ)は「役気」(カミノケ)と書くが、とちらも「疫気」を表すものである。「役気」は、写本によって「疫気」と書くこともあるから、漢語由来の「疫気」を誤って「役気」と書いたのではないかと思う。ここで暫らく漢籍に見える例を見てみよぅ。『三国志、魏志、武帝紀』ては、

0     自頃以来、軍数征行、或遇疫気、吏士死亡不帰……。

とある。

ようするに、「古事記」に見える「神気」(カミノケ)は、「疫病」が「神」によるものであって、当時の人々は人問の支配できない力としで意志していたものであって。「神気」を日本的に「疫病」の意味に用いたものと考えられる。

  以上のほか、『古事記』では「気象」「気診」「二気」のような二字漢語の語素として用いられる「気」もある。その例を見てみよう。

⑤  夫、混元既凝。気象未效  (序 稽古照今)

「夫れ、混元既に凝りて、気象 未だ 效れず」

⑥  禾移浹辰、気珍自清  (序  古事記機錄の發端)

「未だ 浹辰を移さずして、気珍 自ら 清まりき」

⑦  乗二気之正、齊五行之序  (序  古事記機錄の發端) 

「二気の正しきに乗り、五行の 序 を齊へ」

  上記の用例では、⑤と⑦は中国から来たものである。⑤の「気象」が、「気と象(形、質)」を指し。自然界の大気の状態と現象を表す。⑦の「二気」が「陰陽」を指し、『左傳、昭公元年』にある「天有六気......六気日:陰、陽、風、雨、晦、明也」から由来するものであろう。⑥の「気珍」は悪い気、悪気を表す。これに対して中国語では、

0    沴気朝浮  妖精夜殞   「庚信、哀江南賦」

  とあるように「沴気」と書き語順が違っでいる。意味としては用例②と変わらない。ゆえに、これは中国から輸入した時に語順が転倒したものであろう。

    二『日本書紀』に見える「気」

  『日本書紀』は奈良時代の歴史書で、正漢文体で書かれているものであって、本文には漢字による日本的造語のほかに、漢語語彙も多く見られる。例えば、「気」の複合語には「気象」「気息」「気昧」「気絶」「気力」「雲気」「白気」「毒気」「赤気」「春気」「意気」「稟気」「膽気」「妖気」などがある。そして。歌謡や訓注は字音假名によって書き表された。「気」が表音文字(字音仮名)として『日本書紀』の歌謡や訓注によく使われていた。

1.表音文字としての「気」

『日本書紀』の歌謡及び訓注に見える「気」は、字音假名であって。和語の一音節を表記し、或いは漢字を大和ことばによって訊む場合に用いたものである。これらは漢字「気」の意味に関係なく、昔のみ借りた日本的漢字用法での「気」である。例えば、

歌謡に覚える「気」

居気辭   (幾多)                    波榔歩佐和気   (隼別)

居気僕   (幾多)                    佐須陀気   (刺竹)

訓注に見える「気」          i

祈狩此云于気比餓利               屯倉此雲  彌夜気

誓約之上此云宇気警能美灘箇       保食神此云宇気母知能加微

2.表意文字としての「気」

(1)「気噴」

『日本書紀』には、「気噴」が見られ、「イフキ」と読んでいる。例えば。

① 吹 棄 気 噴 之 狹 霧 (卷一、神代上 瑞珠盟約)

② 吹 出 気 噴 之 中   (卷一、神代上 瑞珠盟約)

  などと慶長己亥姑洗吉辰本『日本書紀』には、このような例は七例あり、①は三例、②は四例である。これらの例は呪術者の行為に見倣わしたところを描写した文である。①と②に覚える「気噴」は、井の水。揺り動かす行為、気息、霧はすべて物の誕生を促すものであって、生命についていう場合もある。そして。「吹棄気噴之狭霧」の割注に「浮枳于都屢伊浮岐能佐擬理」とあり。この音仮名によれば、上代では「気噴」を「伊浮岐」と読んでいたことが分かる。

  「イフキ」という言葉は、前節の『古事記』にも六例見られるが、全部「気吹」と表記しでいた。佐藤喜代治氏が『「いき (息)」「いぶき(気吹)」などの「い」は吸ったり呼いたりする息を意味する語で、それが活用して「生く」となり、「いき(息)」はその名詞形と考えられる。「イ」は神のはたらきによるもので。人が生きている間、神は魂として活動し。呼吸はその活動で。生きている間は「イ」である』と述べられている。これによれば。「イキ」は「生キ」と同根の語であって、「伊浮岐」は「イをフク」から複合語化されたものではないかと思われる。「気噴」の「気」は、「イ」の意味と似た点で表意的に用いられたものであって、「噴」と「吹」はその訓を借りて用いたものである。このように、字意及び訓義を借りた「気噴」と「気吹」は、和語の「イフキ」を表記するための日本的な漢字の組合せであると思われる。

『日本書紀』が奈良時代(七二0年)成立した時。すべて漢字で記録したのは言うまでもない。そこで「気」には表音的と表意的との二つの用法が見られる。平安初期を初めとして。古写本では表意的に用いた「気」に「イキ」「イ」「オキ」「力」「シルシ」「ココロバセ」などの訓を付けられるようになった。このように漢字を大和ことばによる訓み方は、和訓と称されている。次に、「気」の訓とそれぞれの意味関係について考察してみたい。

(2)「気」と「イキ」

『日本書紀』には、

③  但 臨 死 気 絕 之 際 (卷一、神代上 四神出生)

とある。用例③は「イキ」が絶えることは「呼吸」しなくなって一時的に気を失うことを指すのである。「気絶」は漢語であって。醍醐寺蔵古抄本『遊仙窟』に見える。ぞの例を示す。

0    耳 聞  猶  気 絶   眼 見 若 為 憐

  この「気絶」という語は現代まで残っていて、普通「キゼツ」と音読している。さらに、古辞書に見える「気絶」についての記述を見てみると

0    気絶     スベナシ   遊(仙窟)   類聚名義鈔(図書寮本)宮內廳書陵部藏

  これによって分かるように、「気絶」の和訓が「スベナシ」となっている。つまり、どうにも方法がなくて困る。どうしようもなく苦しいという意味で訳してあることが分かる。

「気」は「息」や「呼吸」以外の意味で使われた時でも、「イキ」と読んでいた例が見られる。例えば、慶長己亥姑洗吉辰本『日本書紀』には、

④  其 辭 気 慷 慨 故 以 即 配 經 津 主 神  (卷二 神代下 天孫降臨) 

  とある、「心を奮い起し、いきどおりなげく」という意を示している。これに似た用例に、唐代韓愈の『与汝州盧郎中論薦候喜状』には「(喜)五月初至此、目言為閣下所知、辞気激揚、面有衿色」が見られる。上の例に現われる「辭気」は、写本によって読み方が違っている。新訂増補国史大系『日本書紀』によれば、

0   辭 気  慷 慨      内宮廳陵部(図書寮)禁中本

0   辭 気  慷 慨      丹鶴業本

とある。

  上記の例で分かるように、「辞気」に。「コトバイキ」と「イキザシ」二通りの読み方がある。「辞気」は「気」による複合語である。ここに見える「気」は口振り、言葉つき、口調の意味である。「コトバイキ」と読む場合は「辞」を「コトバ」と、「気」を「イキ」というふうに、字訓で読んだものである、

  これはこの語の構造に基づいた読み方であるが「気」と 「イキ」との間に意味的ずれが見られよう。『時代別国語大辞典  上代篇』では、「気」について、

イキ(息、気)      ―、呼吸、気息。

         二、気力、気合、意気。

と記述している。

「イキ」と「気」が同じ意味でない場合でも、当時は一般に「気」を「イキ」と読んでいるので、ここでは「イキ」と読んだのであろう。また「気」の訓として使っているうちに、「気」に影響よって。「イキ」の意味拡大も考えられる。

以上のほか、『日本書紀』には次のような用法の「気」もある。

⑤  字等復 有 超 倫 之気   (卷二 神代下 天孫降臨)

⑥  幼 有雄略之気。及壯容貌魁偉 (卷七 景行天皇三年辛丑)

⑤と⑥の「超倫之気」「雄略之気」に見える「気」は、人、物の属性についていうもので。ここでは気質、特色、特質を指すのである。例えば「同聲相應、同気相求」《易 乾》がこの用法に近い。さらに

⑦ 多 得 神 気 以 臥    (卷七 景行天皇 四十年庚戍)

⑧ 嚼 蒜 塗人及牛馬。目不中神気也  (卷七 景行天皇 四十年庚戍)

も見られる。例文⑦と⑧は。「ヲエ」という「疫病」を起こし、力を失い気力を失うことについていう例であるが。ここに見える「神気」の「気」を(イキ)と読んでいる。これまで考察してきたように。「気」が目に見えるものを表す時には。わりに固定した和訓が付けられているが。抽象的な概念を表すときはさまざまな訓み方が見られる。

三   『万葉集』における「気」

  『万葉集』は日本現存最古の歌集であるが。その字音假名は『古事記』の用法にやや近い、訓假名、戯書などの発達が著しい。そして。この時期に訓仮名も万葉集に多様に用いられるようになり万葉集に反映されている。本節では万葉仮名としての「気」を取り上げると同時に。漢字の字意を借りたⅠ気」がどのように用いられたかを中心に考察しよう。

1,普通名詞

  気(日)、気(笥)、気(食)、気(木)、可麻気利(鴨亮」

安佐気(朝明)、伊気(池)。加気(植物)、可気(影、陰)

加気(影)、 左気(酒)、之気(茂、繁)、多気(嶽)、

多気(竹)、布気(夕占)、和気(奴)塩気

2,動詞

志気里(茂)、可気利(翔)、奈気久(歎、嘆嵯)

波気(流)(楓)     気頭良(頭)(梳)、気並(日並)

3,形容詞

之気伎(繁、茂)、思気志(繁、茂)、之気思、(繁)

眞気永(眞日長く)。多比良気長(日長く)

  上記で分かるように。和語では「気」が―字―音節の音仮名として用いられる。『万葉集』において、「気」の字音だけを借りて国語を書き表すのはもちろんのこと、「気」の意味を借りて国語を書き表すものも見られる。

  本来、漢字は表意文字で各字に一定の意味を持っているので、古代人が漢字を用いた時、漢字の意味を取って日本語の表現に用いたことも古くからあった。例えば、上代では「イキ」(息)という言葉を「伊伎」「伊吉Ⅰ「伊棋」「伊枳」と表記したり、「気」と表記したりした。

0    気衝明之嘆友 (息づき明し 嘆けども)

0  気衝渡吾戀  (息衡きわたり  わが戀ふる)

また、次の「気築」と表記した例も見られる。

0    気緒に言気築之   (息の緒に   わが息衝きし)

などある。

上記では和語固有の言葉を表すために用いた字音で「ため息」の意昧である。これに対して同じ意昧で「気」で書き表わした例である。

  例のように、「伊伎都枳」(いきづき)を「気衝」また「気築」と書くのは、漢字「気」の持つ「呼吸」という意味を取って、和語の「イキ」を表記したものであろう。「ため息Ⅰという言葉は中国語では「嘆気」または「嘆息」と書くのであるが、『万葉集』に見える「気衝」は、古代日本独特の表記方による「義+音」の形である。つまり、「気衝」「気築」は中国語にはなく、日本文献に現れた「気衝」「気築」は日本人独創した言葉で,ここでの「気」は意味を表し「衝」また「築」は、訓仮各で漢字の原義には関係なく、その訓だけを借りたものである。その外に万葉集では次のような例も見られる。

0  気緒爾  念有吾乎   (気の緒の思へるわれを)

0  気緒爾  妹乎思念者 (息の緒に妹をし思へば)

0  気緒爾  言気築之  (息の緒に  わが息衝きし)

  例の「気緒」(いきのを)は、「生命」「命の綱」という意味の言葉で。「気」の意を借りて書き表す用法である。これは日本の言葉であって、同じ意昧を表すのに「伊伎能平」と表音的に書く例も見られる。例えば、

0  伊吉能乎爾  奈気加須平良   (息の緒に   嘆かす子ら)

0  伊吉能平爾念   (気の緒に思ふ)

  とあり、つまり「息をすることが生きることであり、連続のものを(...の緒)」というところから得た意味であっで、「気緒」の「気」は『万葉集』の漢字仮名交じり表記に用いたものであろう。

   また、「気」を用いた表現に他例も見てみよう。

0  靡足波爾  塩気能味  香乎礼流国爾

0  塩気立  荒礒丹者雖在 

  とある。右に見える「塩気」(しおけ)という言葉は普通「潮の香」。「潮けふり」を表すものとされているが。この「気」は接尾語の用法として、ある意味を持つ二字漢語と見られる。しかし。中国の文献には同じ語が見当らない。『史記』の「倉公傳」には「陰気入張、則寒気上爾熱気下」とある、また、唐代詩人杜甫の「観月呈漢中王詩」には、「夜深露気清、江月満江城」とある。以上にあげたほかに、彼の例もある。

0    天將雨水気上。  

0   寒夜潮気白、楚樹晴鳥早。 

0    海気朝成雨、江天晩作霞。

  上記で分かるように、中国の古典に見える「寒気」、「熱気」、「露気」、「水気」、「潮気」、「海気」などの「気」が、人問がうすらと感じられる程度湿っているさま、熱さ、寒さなどについてのいうらのである。ゆえに『万葉集』の「塩気」が「潮の香」という意昧であれば。これは上代人が日本語を書き表すために作った造語であると考えられよう。そして、ここでの「シホケ」という訓によれば。「塩」は漢字の訓を借りたものと見えるが。「気」は漢語かそれとも和語に当てた音仮名か明らかでない。国語表現の角度からみれば、人間特有の感覚で直接感じたことを表す時に。上代より「気」が用いられていたことが考えられる。

  以上は『万葉集』の「気」について検討してきたが。和語の音節を表す「気」はほどんと「ke」(ケ)音に用いられる。その中に漢字「気」の音と意、両方とも借りたものは一語として使われ、また語頭。語尾に接し。様子、さまを示している。そしで、和語を書き表すために。「気」の訓を借りて。人間の呼吸について用いた例もある。

  漢字は古くから中国文化と共に日本に伝えられた。文献記錄上では、應神天皇の治世に百済から阿直岐や王仁が来て、論語や千文字を奉ったとあるのが古いが、『後漢書』に建武中元二年(一世紀ごろ)と記す「漢委奴国王」の金印などもある。古代日本人は漢字の音を便って日本語を記録した。日本国の最古の伝承集『古事記』と史書『日本書紀』にも見られるよさに身分名、人名、地各など日本語の固有名詞が漢字の音を借りて書き表わされた。音訓に渡って漢字を利用した万葉仮名を始めとして、日本独特の表記が少しずつ発達してきた。それから、漢字の表す意味に近い意味の持つ日本語に翻訳して読む字訓も発達して来た。それに伴って、長い歴史の中で、漢字、漢語が日本国語への同化や漢和語彙の音訓混同や意味の融合(混同)が生じていたことも考えられる。

  きて、古代日本語における「気」語彙の特徴及び「気」と和訓の意味関係については。今後の機会で検討したい。

   主な参考文献

l 山田孝雄(假名遣の歴史)寶文館藏本 昭和十四年七月

2 武部良明(漢字の用法)角川書店  昭和五十一年十二月

3 阪倉馬義編(國語史語彙史)「講座國語史第三卷」大修館書店 昭和四十七年

4 武部良明(日本語表記法の課題)  三省堂―九八一年六月十日

5 「同音語の研究」国立国語研究所報告20秀英出版一九六一年

6 「古代の語彙」講座日本語の語彙  明治書院昭和五十七年

7 「新譯華巖經音義私記」築鳥裕(古辭書音義集成)古書院 昭和五十三年五月

8 醍蘭寺蔵古抄本「遊仙窟」(複製品 大正十五年十二月の複製)

9 岩崎本「日本書記」(東洋文庫蔵)築鳥裕 石塚晴通編 貴重本刊行会 昭和五十三年十一月

10 新訂增補國史大系 「日本書記」 吉川弘文館刊行 昭和四十二年

(寬文九年刊 「日本書記」 (江戶初期)を底本とした。)

11「日本書記索引」...~四卷 中村啟信 角川書店 昭和四十三年二月

12 高木市之助 富山民藏 「古事記總索引」平凡社 昭和四十九年

13 日本古典文学大系 「古事記」岩波書店 昭和五十七年五月

14 「校本万葉集」佐佐木信綱編 岩波書店 昭和六年~七年

15 「万葉集總索引」正宗敦夫編 平凡社 昭和四十九年

16 日本古典文文大系「万葉集」岩波書店 昭和三十二年五月

17 「時代別國語大辭典上代編」三省堂 昭和四十二年

18 (辞源)商務印書館 一九七九年六月

19 「大漢和辞典」大修館 昭和三十二年三月初版


 
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对不起,暂时没有内容!

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